
「自費出版で本を出したいけれど、AIに文章を書いてもらうのって邪道なのかな?」
そんなふうに思っている人もいることでしょう。
AIを使った執筆は、まったく邪道ではありません。
そもそも、執筆において楽をするのは悪いことではないのです。
歩く代わりに車や電車を使うのと同じで、便利な道具を使うのはごく自然なことです。
現在、漫画界では当たり前のように使われているペンタブなどのデジタルツール。
世に出回り始めたころは、それらを使っている漫画家さんをバッシングする人たちがいました。
ですが今では、そんな声もすっかり聞かなくなりました。それと同じです。
実際、芥川賞を受賞した九段理江さんは、作中でAI(chat gpt)を使用したと公言しています。
といっても、AIの文章を使ったのは、作中で主人公の問いかけにAIが回答する部分のみとのこと。
とはいえ、AIを用いることが日本最高峰の文学賞で「問題なし」とされているのですから、私たちがうしろめたさを感じる必要はないでしょう。

クマヤマ(編集者・作家)
キャリア20年超のベテラン編集者。作家としても小説を6冊刊行。
▶ クマヤマの詳しいプロフィール
AIで「理想の文章」を書くのは、実は結構大変です
ただ、一つ知っておいてほしいことがあります。
それは、AIで「自分好みの文章」を書くのは意外と難しく、実は手間がかかるということです。
たとえば、AIに「私の初恋について書いて」と丸投げしても、AIは困ってしまいます。
「当時のことを教えてもらえないと書けません」となるわけです。
つまり、人間側から十分な要素を渡す必要があります。
僕自身、AIに原稿を依頼する際には、箇条書きで要素を渡すようにしています。
しかし、この「要素出し」が結構な手間なんですよね。
自分の頭の中にある出来事を、思い出しながらアウトプットしなければならないからです。
だからといって要素出しをサボって情報が足りなくなると、自分の言いたいことが原稿に全く反映されなくなってしまいます。
これでは、そもそもとして原稿を書く意味がありません。
AIとの対話で気をつけたいこと
要素出しが面倒な場合は、AIと対話しながら引き出してもらうのもアリです。
ただし、AIは過去の会話を覚えておくのが苦手。
会話のラリーを重ねるうちに、少し前の会話にあった内容を記憶から消してしまいます。不具合ではありません。そういう仕様なのです。
ですので、良いやり取りができたら、WordファイルなどAI以外のものにまとめておくことをおすすめします。
そして最後に「これらを清書して」と指示すれば、指定した文体で整えてくれます。
また、AIにインタビュー役を頼むのもいいですが、人間のように話を広げてくれることはあまり期待できません。
AIは人間のことに興味がないので、適当に聞いてくるだけだからです。
ですから、聞かれていなくても言いたいことがあれば、自分からどんどん話しましょう。
ここでしっかり理解しておきたいのは、AIは感情を理解できず、共感もできないということです。
理解も共感も「出来た振り」をしているだけ。
AIが出力するメッセージに、感情は一切ありません。どこまでいっても、ただの文字の集合体にすぎないのです。
AIと話をするときは、「自分の気持ちを理解してくれている!」なんて思わず、ドライに割り切る必要があります。
AIとのやり取りが面倒に感じられるなら、人間のインタビュアーに話を聞いてもらい、そのテープ起こしを自分好みの文章に調整していくという方法を選ぶのもいいでしょう。
商業出版の現場でも、依頼者がお話をして、それをもとに一冊の本にするという方法はよくあります。
重要なのは「自分が満足できるか」
まとめとしては、AIで原稿を書くこと自体には何の問題もありません。
重要なのは、AIを使って出来上がったものに、あなたが満足するかどうかという一点だけです。
「やっぱり自分の手で、一冊の本を書き上げたい」
もしも、あなたにそのような思いがあるのなら、長い文章を書いた経験がなくても、まずは自力でチャレンジしてほしいです。
文章がヘタでも構いません。
最初から上手に書ける人なんて、めったにいないのです。
あなたなりに、無理矢理にでも言葉を絞り出して書いてみる。
その不完全な原稿をAIに読みやすく整えてもらう。
そして最後にもう一度、自分の手で気になるところを書き直してみる。
こうすることで、AIを使いながらもあなたの血が通った文章を書くことができます。
長々と書いてきましたが、難しく考える必要はありません。
あなたのクリエイティビティーが最も満たされる形で、AIを使ってみればよいのです。
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