
劣等感から小説賞への応募を決意
今回は、当サイトの管理人である僕クマヤマが、ある小説賞に応募したときのことを書きたいと思います。
僕はこれまで編集者とライターをやってきました。出版界ではよくある働き方です。
そんな僕が10年ちょっと前のある日、「小説賞に応募しよう!」と思い立ちました。
それまで小説を書いた経験はありませんし、いつか賞に応募しようとも考えていたわけではありません。
その日、突然に「小説賞に応募しよう」と思ったのです。

クマヤマ(編集者・作家)
キャリア20年超のベテラン編集者。作家としても小説を6冊刊行。
▶ クマヤマの詳しいプロフィール
当時の僕はコンプレックスを抱えながら生きていました。
「自分はやりきった」と言えるものがひとつもない。それが僕のコンプレックスでした。
中学・高校と部活に入らず、だらだらと過ごしていました。
高校受験も大学受験も本気でがんばれず、なんとなく入れた学校へ通いました。
大学も遊んでばかり。
大学を卒業後、編集プロダクションにたまたま採用され、その2年後に出版社に移ります。
本当に運がよかっただけです。
それからしばらく経つと、コンプレックスが日に日に大きくなっていきました。
ある日、頂点に達して、「小説賞に応募する!」と決めたのです。
小説賞に応募しようと思ったのは、書くことに多少の自信があったから。
ネットでいくつかの小説賞を調べ、締め切り設定がちょうど1カ月後の賞に狙いを定めました。
たしか原稿用紙換算で150枚以上とか、それくらいだったと思います。
その賞を選んだのは、締め切りが近いというそれだけの理由でした。
締め切りが3カ月とか半年先になると「なあなあ」になって、結局やらずに終わってしまうかもという思いがありました。
ぐうたらな性格なのは、自分が一番よく知っています。
1カ月間集中して書きまくる。
そのとき、僕は「やりきれた」と心の底から思えるのではないか。
そのためにも、短期集中決戦がよかったのです。
逃げようとして妻に泣かれる
これまでライターをしてきましたが、原稿用紙150枚もの長い文章は書いたことがありません。
とにかく、まずは小説のネタ出しから始めました。
2日くらいでだいたいの大筋が決まり、時間もないので考えながら書いていくことに。
日中も働いていますから、執筆は平日の深夜までと土日です。
時間は限られていますから、スラスラと原稿を書き進めたいところ。
でも、初めての小説執筆ですから、うまくはいかないんですよね。
書きながら「これで良いのか」と何度も首をかしげました。
時間が無いからと無理矢理書き進めましたが、原稿用紙60枚くらい書いたところでキーボードを打つ手が止まりました。
明らかにおもしろくなかったのです。
ここから先で挽回できそうか?
自問自答した結果、答えはノーでした。
自分でおもしろいと思えないものを書くことほど、意味のない時間はありません。
その作品は、そこでボツとしました。
この時点ですでに執筆を始めて2週間ほどが経過しています。
ここからおもしろいアイディアを出し、原稿用紙150枚を書き終えるまでに残された日数は、あと15日くらいしかありません。
2週間で原稿用紙60枚書くのがやっとだったのに、同じくらいの期間で150枚を書かなければいけない。
しかも、ボツにしたものよりも数段おもしろいネタをひねり出さなければならないのです。
もう無理だ。
強引に書いて応募しても、それは納得できないものに決まっている。
だったら、やらない方がいい。
そうだ。
ネットで別の賞を探して、そっちに応募しよう。
今度は締め切りが2カ月のものを選ぼう。
大丈夫。
それでもヒリヒリするような「やりきった!」という実感は得られるはずだ。そうに違いない。
だから、一旦やめよう。方向転換するだけだ。
そのことを妻に伝えると、彼女の目からボロボロと大きな涙が溢れました。
「自分で言ったことなんだから、最後までやってみよう。間に合わないかもしれないけど、それでもやってみようよ」
怒るでもなく、呆れるでもなく。
悲しんでいるのが伝わってきました。
ハッとしました。
自分自身が心底情けなくなりました。
また逃げて、言葉で取り繕って、自分をごまかして。
そんな生き方がイヤだから、「やりきる」と決めたんじゃないか。
僕は一度だけ強く自分を責めてから、「よし、やる!」と言いました。
妻は泣きながら、少しだけ笑ってくれました。
初めて味わう頭が焼き切れるような経験

すぐに次のアイディアを練り始めました。
いくつかのネタを出し、ブラッシュアップ。
「いけるかも」と不確かながら手ごたえを感じたときには、3日か4日は経っていました。
もう10日しか残されていません。
1日に原稿用紙20枚を書けば、1週間でだいたい終わります。
そして3日で推敲すれば、なんとか間に合う計算です。
このスケジュールを達成するには、無理矢理にでも書き進めるしかありません。
多少詰まっても、表現があまり気に入らなくても、とにかくガンガン書き進める。
そして書き終えた後の推敲で、なんとか体裁を整えるという作戦です。
当時の僕にとって、1日に原稿用紙20枚を書くというのはとても大変なことでした。
それでも、決めたからには書くしかありません。
なかば強引に書き進めて、なんとかノルマを達成できていましたが、どうしても筆が進まないシーンにぶち当たることもあります。
そんなとき僕は決まって、ベッドに突っ伏しました。
顔を布団に押し込み、両手でシーツをきつく掴んで、この後の展開を呻くようにして声に出すのです。
声に出すことでぐちゃぐちゃの思考が整理されたら、その瞬間にPCデスクに戻って言葉に出していた展開を打ち込んでいく。
考えて考えて考え抜きました。
あまりにも頭を回転させたせいで、脳が焼き切れてしまいそうな感覚が何度もありました。
そして、なんとか1週間で原稿用紙150枚を書くことができました。
正直にいって、出来としては100点満点の30点くらい。
でも、それは想定内のことでした。
ここから推敲することで、点数はグンと上げることができる。
ライターである僕は、そのことを知っていたからです。
残りはあと3日。
でも、あえて原稿を1日寝かせました。
この1日の空白があることで、さらに良い推敲ができるというのが僕の考えです。
推敲は大事な作業ですが、いくぶんか心は楽でした。
原稿の完成度はまだまだですが、文字数だけならすでにクリアしているからです。
推敲をするたびに作品の質が高まっていくのがわかり、何度も何度も繰り返しました。
そして締め切りの日の深夜。
郵便局の夜間受付へ歩いていき、当日消印をもらって、プリントアウトした原稿を送りました。
帰り道は、とても晴れやかな気分でした。
完璧とはいえない出来でしたが、小説を一冊分書き終えたのです。
「やりきった」という充実感が胸にはありました。
夜風にあたりながら、胸の中がほんの少しだけ軽くなった気がしました。
「やりきった自信」は貴重な財産

作品を郵送してから数日は「賞を獲れるかな? いや、あれじゃ無理だよな」なんて考えていましたが、そのうちすっかり忘れてしまいました。
やりきったことで、僕の目標は達成されていたからです。
心から「やりきった」と言える経験は、僕に確固たる自信を与えてくれました。
出版社の編集部から電話があったのは、そんなある日のことです。
僕の応募した小説が、佳作に選ばれたという連絡でした。
大賞は1人いて、その人は応募作品で即デビュー決定。
僕ともう1人の佳作組は、編集者と新しい作品を作り、それがおもしろければデビューできるという話でした。
もちろん嬉しかったですが、妻が喜んでくれたのが何よりも嬉しかったです。
そこから、僕の世界は広がりました。
出版社の編集さんと打ち合わせをして、励まされたり、ダメ出しを受けたりしながら、作品を作り上げていく。
僕は編集者ですが、そのとき初めて作家さんの気持ちを知った気がします。
編集者さんにアイディアや原稿を見せるときって怖くもあるし、一方でワクワクもするんですよ。
自分でも気づかなかったところを褒めてもらえたり、見落としに気づかせてくれたり。
別の視点から「編集者のあり方」についても勉強になりました。
何より変わったのは、やはり自信がついたことですね。
頭が焼き切れそうなほど考えて、書いて、そしてひとつの作品を完成させたことで、コンプレックスはすっかり消えました。
そして、1冊丸々の執筆仕事も「任せてください」と自信をもって受けられるようになりました。
その後、僕は6冊の小説を出版しました。
本当に運と巡り合わせのおかげ。ありがたいことです。
長々と書いてしまいましたが、言いたいことは「やりきるのは大変だけど楽しいですよ」ということです。
この記事は、自費出版に興味のある方が読んでくれていると思います。
でも正直に言うと、やりきる経験をしたいなら、別に自費出版である必要はありません。
小説賞に応募してもいいし、小説投稿サイトに載せてもいいし、Kindleにアップしてもいい。
それでも「自分だけの本を、自由に作りたい」という方もいるでしょう。
その気持ちもよくわかります。
そういう方には、ぜひ2つのことを経験してほしいです。
「本気で執筆に向き合うこと」と「編集者と一緒に作り上げること」。この2つです。
ぜひ、執筆と出版を全力で楽しんでみてください!
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「自分も夢中になって本を書いてみたい」
「書きたいものはあるけど、踏み出せずにいる」
「書き上げる自信がない。背中を押してほしい」
「一度だけ、話を聞いてもらえますか」
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私、クマヤマになんでもご相談ください。
返事は100%します。(お望みの答えを必ず出せるとは約束できませんが)
本当にどんなことでも構いませんので、お気軽にお送りください。
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最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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